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馬場光子先生を囲んで 中世歌謡研究

「梁塵秘抄を読む会」

 

歩みの記録

 

後白河上皇様(1127〜1192年)もその魅力にとりつかれて、のどがかれるほどに歌い狂われたという今様(当時のはやり歌。今で言う流行歌)。上皇様は、その今様を集めて「梁塵秘抄」を編纂されました。

残念ながら今に伝わるのは、その一部のみです。けれど残された歌をひとつひとつ味わう時、古の民衆の生活がいきいきとよみがえります。

「梁塵秘抄」研究の第一人者、馬場光子先生が親しみやすい語り口で、私たちを中世の歌謡の世界へとご案内くださいます。

まず口伝集から読みすすめることになりました。

今に伝わる『梁塵秘抄口伝集』巻第一と巻第十の全体構成を明確にし、それに従って読みすすめてまいります。その構成は次の通りです。

 

現存する『梁塵秘抄口伝集』の構成

『梁塵秘抄口伝集』巻第一

一 歌の起源

(1) 神楽・催馬楽・風俗・今様

(2)  今様起源譚

『梁塵秘抄口伝集』巻第十の構成

一 口伝集九巻の撰述の由来

二 十余歳から今様を歌いつづけた後白河院

三 今様のさしたる師はいなかったこと

四 後白河天皇、傀儡女乙前を師として今様を習得

五 乙前の今様正統譚

九月法住寺供花会の今様沙汰−さはのあこ丸の乙前批判ならびに乙前の反駁

(1) 法住寺の今様の会、小大進の今様と一致した乙前流今様

(2) 同、古柳「沢に鶴高く」を唯一人知っていた後白河院

(3) 目井の大曲「旧河」秘蔵譚

 敦家と目井  顕季サロンと目井・乙前  目井を大切にした清経

(4) 乙前の今様を相承したものはいなかったこと

 ささんみのこと  清経の、刀利・初声養生譚

六 乙前の死と一周忌法要の夢中示現譚

七 後白河院の今様を継承する弟子のいない遺恨

(1)相承の弟子のいない遺恨

(2) 年来の弟子

      信忠  仲頼  貞清

(3) 中頃の弟子

      広言・康頼  清重  親盛  為行・為保  能盛  業房

(4) 昨日今日の弟子

      知康  実教  雅賢  定能  兼雅

八 延寿、後白河院より大曲「足柄」を相承

九 後白河院の寺社における今様示現譚

  (1)熊野参詣・初度

  (2)熊野参詣・第二度

  (3)熊野参詣・第十二度

  (4)賀茂参詣

  (5)厳島参詣

  (6)八幡参詣

十 今様示現の理由−劫のいたすところ−

十一 今様の徳

十二 今様往生論

十三 口伝集十巻撰述の理由

十四 奥書

十五 追記−弟子のできた喜び

以上の構成順に読みすすめた歩みを記してまいります。

(注)記載の『梁塵秘抄』本文、ページ数、[ ]見出しは、新編日本古典文学全集42より『梁塵秘抄』を使用。

 

1回 平成171126日(土)午後3時より 青南福祉会館 集会室D

「梁塵秘抄口伝集 巻第一」

一 歌の起源

(1)    神楽・催馬楽・風俗・今様

(2)    今様起源譚

[一]神楽・催馬楽・風俗と今様

(いにしえより今にいたるまで、〜 習ひおほくして、その部ひろし。)P341

歌の起源を探りました。神代に始まる神楽歌から、催馬楽、風俗、そして今様。

[二]今様の起原伝説

(用明天皇の御時、〜 今様と申す事のおこり。)P342

今様の起こりは聖徳太子の頃。葬送儀礼を司る土師氏、そのもとで奉仕した遊部たちが今様と深くかかわっていたようです。

 

第2回 平成171218日(土)午後2時より 杉野服飾大学 第二新校舎2201教室

「梁塵秘抄口伝集 巻第十」

一 口伝集九巻の撰述の由来

 [一]序−撰述の由来

(神楽・催馬楽・風俗・今様の事のおこりよりはじめて、〜 これを撰ぶところなり。)P343

ここに書かれた神楽、催馬楽、風俗、今様について、それぞれの歌を味わい、今様をおこした傀儡女達の系譜を見ました。

今様はどんな声でうたわれたのか、こんな声ではという一例として、「水白拍子」を聞きました。空に澄みのぼるような声でした。

今日の歌

(神楽歌) 「幣(みてぐら)」 本(もと)…本(もと)と末(すえ)とある。

幣は 我がにはあらず 天(あめ)に坐(ま)す 豊岡姫の宮の幣 宮の幣

ほかに…

この杖は いずこの杖ぞ 天に坐す 豊岡姫の宮の杖ぞ 宮の杖ぞ

この笹は いずこの笹ぞ 天に坐す 豊岡姫の宮の笹ぞ 宮の笹ぞ

(催馬楽) 平安最初期、地方からの歌が集まっている。

「道口(みちのくち)」

道の口 武生の国府(こふ)に 我はありと 親に申したべ 心あひの風や さきむだちや  (あひの風…東の風。北陸方言)

 

「我家(わいへん)」

わいへんは とばり帳も 垂れたるを 大君来ませ 婿にせむ み肴に 何よけむ あはびさだをか かせよけむ

わいへん…わが家。  帳…御帳台のカーテン。

さだを…さざえ。  かせ…うに。

(『源氏物語』−帚木−に引用されている。「とばり帳」「何よけむ」)

(『梁塵秘抄』二・四句神歌

わが子は十余になりぬらん 巫(かうなぎ)してこそ歩(あり)くなれ 田子の浦に潮踏むと いかに海人(あまびと)集ふらん 正(まさ)しとて 問ひみ問はずみなぶるらん いとほしや (364)

歩(あり)く…ふらふら歩く。漂泊する。

正し…あたるかあたらないか

(風俗) 「風俗歌」の略で地方歌謡の意。諸地方から貢納され宮廷宴遊歌謡として管理

伝承され、雅楽器をもって伴奏された。東国歌謡を主流とする。当初は西国もあった。

「玉垂れ」

玉垂れの 小瓶(をがめ)を中に据ゑて 主(あるじ)はも こゆるぎの 磯の若藻(わかめ) 刈り上げに

若藻(わかめ)…「若い女」がかけられている。

(「水白拍子」)

水のすぐれておぼゆるは 西天竺(さいてんじく)の白鷺池(はくろち)

尽浄許由(しむしょうこゆ)に 澄みわたる 昆明池(こんめいち)の水の色 行く末久しく澄むとかや 賢人の釣を垂れしは 厳陵瀬(げんりょうらい)の河の水 月影ながら洩るなるは 山田の筧(かけい)の水とかや 蘆の下葉を閉づるは 三島入江(みしま)の氷水 春立つ空の若水は 汲むとも汲むとも 尽きもせじ尽きもせじ 

 

第3回 平成1817日(土)午後2時より 青山生涯学習館 学習室3 

「梁塵秘抄口伝集 巻第十」

二 十余歳から今様を歌いつづけた後白河

(一)(二)(三)にわけ、はじめの部分(一)を読みました。

 [二]青春回顧−今様耽溺のあけくれ

(そのかみ十余歳の時より今にいたるまで、〜 日を過ごし月を送りき。)P343〜P344

(一)十余歳からその時にいたるまで、今様を好んで日々稽古を怠らず、春、夏、秋、冬、四季を通して、昼も夜も分かたず今様を歌いくらす後白河院。そのありさまが、文学的かほりたかい修辞でほこらかに書き記されています。

今日の歌

(遅々) 日が長くのどかなさま。

     「春日遅々」<詩経・七?>

(枝に開け) 梅花の早春をさす。

梅が枝に来ゐる鶯春かけて 鳴けどもいまだ雪は降りつつ <古今集・春・上>

梅が枝に来ゐる鶯ヤア 春かけてハレ 春かけて鳴けどもいまだヤア 雪は降りつつ アハレ そこよしや 雪は降りつつ <催馬楽> 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   

新しき年の初めの初春の 今日降る雪のいやしけ吉言  <万葉集・二十・最後>

(散る花) 晩春の櫻をさす。

今朝見れば夜半の嵐に散り果てて庭こそ花の盛りなりけり <金葉集・春・藤原実能>

(鶯…啼く) 鶯は春の最初に鳴く鳥。

春さればまづ鳴く鳥の鴬の言先立ちし君をし待たむ  <万葉集・十>

(郭公…語らふ) 郭公はその初声が夏への推移をつげ、死出の山の彼方から訪れる鳥。

死出の山越えて来つらむ郭公恋しき人の上か語らなむ  <拾遺集・哀傷・伊勢>

(蕭々) 物寂しいありさまの形容。

 

4回 平成18218日(土)午後2時より 青南福祉会館 集会室D

「梁塵秘抄口伝集 巻第十」

二 十余歳から今様を歌いつづけた後白河

(一)(二)(三)のうち、前回の続き、(二)(三)を読みました。

[二]青春回顧−今様耽溺のあけくれ

(そのあひだ人あまた集めて、〜 夜は歌をうたひ明かさぬ夜はなかりき。)P344

(二)大勢でも少人数でもたった一人でも、声がわれて喉がはれ湯水さえ通らなくとも、千日夜も昼も今様を歌い続けた後白河院。

(資賢・季兼などかたらひ寄せても聞き、〜 六十の春秋を過ごしにき。)P344〜P345

(三)音楽の家の資賢・季兼や、鏡の山のあこ丸・神崎のかね達遊女をかたときも離さず、今様を聞き習う後白河院。

今日の歌

「七十一番職人歌合」(1500年成立)画仲詞 どちらの歌がすぐれているか競っている図

(白拍子) 所々にひく水ハ 山田のゐどのなほしろ (「水白拍子」に近い詞)

(曲舞舞) 月にはつらきをくら山 その名ハかくれさりけり

資賢) 「信濃にあんなる木曾路河」を信濃国に流されていた実体験をふまえて「信濃に有りし木曾路河」と歌い換えて名を高めた。

信濃にあんなる木曾路河 君に思ひの深ければ みぎはに袖をぬらしつつ あらぬ瀬をこそすすぎつれ

(季兼) 父刑部卿敦兼はひどい醜男だが今様の名手。篳篥を吹きながら次の今様をくり返しうたひ、妻の愛をとりもどした。

ませのうちなるしら菊も うつろふみるこそあはれなれ 我らがかよひて見し人も かくしつつこそ枯れにしか

<神楽歌 庭火>

み山には 霰降るらし 外山なる まさきの葛(かずら) 色づきにけり

<古今集 巻二十> 

庭火の本歌をとなえるに秘説あり、上句の「外山なる」までを本歌と称し、末句をうたはない。季兼はこの秘説を知っていた。

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