トップページ > 会員たより > 会員の活動堀端俊英 Profile|序文

序  文 
上方舞友の会  
代表 吉村桂充 
草木成仏の思想は、「能」の中にも多くみられ、むかしから日本人に共感をもって親しまれてきたものです。その代表的なものが室町時代の能楽師で世阿弥の娘婿、金春禅竹作と云われる能「芭蕉」にみられます。

さかりをすぎた草木の精の成仏をうたったもので、その自然観は、晩秋の荒れた山寺の庭で芭蕉の破れ葉のはためく姿も、光り輝く仏の浄土と何の変わりもない。地謡で云うように「ただそのままの色香の草木」が、そのまま成仏の世界だというもので、さらには、草木と人間とを同じ次元でみております。

その思想は、仏教思想と日本古来のアニミズムの融合したものであり、豊かな四季と恵まれた自然にはぐくまれた日本人の感性によるものとも思われます。

本書は、堀端俊英師の永年のご研究によるものであり、インドから中国を経て、日本において発展を見せた草木成仏思想について体系的に論述した仏教書です。その内容は、単なる研究書にとどまらず、生活に根ざした文芸の中で、それがどのように生き生きと表現されているかにもふれられています。

本書の中心となるのは、平安中期の慈恵大師良源の口述と云はれる『草木発心修行成仏記』の考察ですが、その部分はかなり専門的になっており、日ごろ仏教にご縁のない方にとっては難解とも思われます。

したがって、一般の皆様には、はじめの章とおわりの章の「日本人の自然観」についてお読みいただければ、著者の意図するところをご理解いただけるものと存じます。

本書が、仏教のご研究ならびに舞・歌謡の世界の一端をご理解いただくうえでの一助となればさいわいです。

地唄「葵の上」 舞/吉村桂充
地唄「葵の上」 舞/吉村桂充